巡り縁絵
めぐりえんえ
依頼主の生活にまつわるモノに、心を込めて絵を描きます。
出逢いによって生まれる、世界にひとつの絵。

生活にまつわるモノ。
たとえば、
手鏡、携帯電話、ブックカバー。
あるいは、
美容師さんのポシェット、お針子さんの裁縫箱、音楽家の譜面入れ、料理人のエプロン、
役者さんの飴玉入れ、珈琲屋さんの時計と灰皿、文房具屋さんの鉛筆削り。
はたまた、
ありがとうの贈り物、お祝いの花束、ふたりの写真立て、旅立ちの御守り…。
対話しながら絵を描いていくと、こうした“モノ”の上に現れた絵に、依頼主の心が宿るのを感じます。
祈りや願いが込められていたり、記念を刻んだり、記憶を封じ込めたり…。
その人ならではの、ささやかで愛おしい “大切” に目を向ける時、心がぎゅっと集まる。
この瞬間を描き留めたいと願っています。
また、絵が誰かの目に留まった時、
持ち主が語る物語は、自身のルーツや日頃の関心であるかもしれません。
それを共有することで、縁は深まります。
そうです、巡り縁絵は、私とあなたの御縁によって生まれるだけではなく、
描かれた絵が次なる御縁を紡ぐこともあり得ます。
あなたじゃないと生まれない絵。
それは、巡る巡る人の心。
こんな御縁がありました(作例)
◆
依頼主 :海外居住計画者
モノ :携帯電話
モチーフ :ガネーシャ
時期 :旅立ち
希望 :15年前に飼っていたインコの羽 を発見したので使いたい
エピソード:インドの神様 ガネーシャが持っているのは、本物の羽根です。友人が海外へ行く前の引越しで、15年も前に飼っていたインコの羽が見つかりました。友人の好きな色を使いながらの制作。約1時間後に、旅立ちの縁起担ぎと、新しい進路への祝い、そして愛鳥の思い出を掲げた神さまが現れました。この絵が行く先々で友人を見守ってくれますように。


◆
依頼主 :音楽家
モノ :パソコン2台
希望 :シンプルで質感にこだわったもの
エピソード:仕事用のPC、メールチェック用のPC。キーボードをメインに扱う音楽家さんでしたので、1台目の仕事用PCは五線譜と音符をイメージし、パッと見はただの黒線に見えるように細かな紋様を描かせていただきました。
メールチェック用のPCは、数年前に亡くなられた奥さんのものでした。Apple社に勤めておられたようで、奥さん自身の奮闘も想い出も詰まった大切な品です。私は絵に、3つの意味を込めました。ひとつは、浮遊。直線から浮かび上がったリンゴマークは、毎日を少しでも気楽に穏やかに過ごせるようにという願い。二つめは、音楽。キーボードの鍵盤が弾け音が広がるイメージと、依頼主の作る曲から得た湿度感・境界の明瞭さと曖昧さ。そして三つめは、やはり目を背けることはできなかった、奥さんの存在。正直、立ち入っていいのかと悩みましたが、この方がいらっしゃらなければ私が絵を描くことはなく、この品を託された意味を思いました。依頼主の心にいつでも奥さんの笑顔があるように、毎日顔を合わせる大切な品の中央からは、太陽のようであった奥さんの温かい光が溢れている。こうして、お会いしたことのない奥さんに背中を押されるように、描き上げることができました。








